曖昧

芸術系の二流建築学生。主に好きなバンド、歌手の楽曲を自分用にアウトプットする場として。建築や本等の備忘録も。

特撮「ウインカー」レビュー

特撮の8thアルバム「ウインカー(2016/02/03)」のレビュー

 

パナギアの恩恵と並んで一番好きなアルバムのひとつ。最新の2枚のアルバムが一番好き、と言えるのは本当に幸せなことだなと思う。


1.荒井田メルの上昇☆☆☆☆

コンセプトアルバムとしての背骨の1曲目としての完成度が非常に高いし「ドライブ中にかけるアルバム」として考えられているのにいきなり事故るのがオーケンらしい皮肉を感じる。

「サイレンが聴こえるまで泣かないで」ってなんか凄く優しくて良いな。

オーケントレインとの共通項が多いが、皮肉としてではなくマジでオーケンがこれを思っていたらかなりヤバい。

この曲と人間蒸発があることによってアルバムの強度が何倍にもなっている凄い曲。


2.音の中へ☆☆

うーーーわ!とサーウンド!がクセになる

NARASAKI感が強いなーってイメージ。

 


3.愛のプリズン(特撮ver.)☆☆

別に嫌いな訳では無いしタイアップ曲としてよくできてるとは思うんだけど、オーケンがこの曲に異常に自信を持っているのは何故なのか。あんたもっといい詞いっぱい書いてるよ。

この曲の歌詞にオーケンが異様に集大成的自信を持っているのが、近年のオーケンの自身のイメージへの誤解とそこから生まれる歌詞の齟齬の根幹を表しているような気がする。

 


4.アリス☆☆☆

地味にサビがかなり好き。歌詞もあんま理解してないんだけどサビのとこめちゃめちゃ良いなと思う。あと「ハー」が好き。

 


5.シネマタイズ☆☆☆★(3.5)

オーケンは会話を歌詞にするのが上手いなあと思う。「あのカメラ、僕の心盗み撮る」の部分、確かに映画泥棒はいつも観客にカメラを向けているなと思った。全体的に完成度が高い曲だなと思う。

 


6.富津へ☆☆☆☆

夜の海辺を運転しながら聴きたいです。

 


7.中古車ディーラー☆☆☆★(3.5)

かなりバカっぽい歌詞だけど好き。メロディもかなり良い。

女がディーラーの心をわかったようなことを言ってて全く分かってていないのが良い。

 


8.ハンマーはトントン☆☆☆☆

エディのピアノが良い。森行く手阻む〜からの流れがめちゃめちゃ良い。ノリが好き。

 


9.人間蒸発☆☆☆☆☆

アルバムで一番好きな曲。リズムメロディ歌詞全部最高。噂話をするフードコートの男達と、それを非難するオーケンの構図が良い。

ある意味狂っているというか、純粋なままの男を書くのが上手いなあオーケンは。

消えた荒井田メルがザ・フューチャーとして登場する所からの展開がこのアルバムのハイライトだなと思う。

「出し抜けは辞めようぜ」という完全なオーケンの誤植に発売まで誰も気づかなかったのがヤバ過ぎる。多分死ぬまで気になるしライブでもドキドキしてしまうと思う。

 


10.7人の妖☆

嫌いではないけど飛ばす確率が高い。

何故人間蒸発の次に持ってくるのかちょっと気になる。ウインカーはセトリにこだわってないらしいのでまあ良いが。

セパタクローにはちょっと多い、が好き。

 


11.旅の理由☆☆☆☆

アルバムのテイストを大きく決める曲。

「オレ」は同じ顔の自分に上手く騙されてしまったのだろうか。そう考えると「ここはオレが上手くやっていく」という言葉に別の意味が見えて面白いな。エディのライト・レフトがおもろい。

 


12.ハザード☆☆☆

次アルバムが出るのかは分からないけどエディ主体のインストはやっぱり欲しいなぁ。

正確にいうとインストではないんだけど、語りでなんて言ってるか分からんのだよな。

しっとり終わる曲で、アルバム全体のイメージを上手く纏めた曲だと思う。

 


総括☆☆☆☆

めちゃめちゃ好きなアルバムなので、意外と曲によってはそんなに好きじゃないものもあって我ながらびっくりしたけど全体的にやっぱ完成度が高いし成熟したバンドとしての魅力がある。

めっちゃ嫌なファンみたいなこと言うと、タイアップ多いのが微妙な曲もある主な理由だと思う。

ドライブ中に聴くイメージなのに車に乗ったら大抵ろくなことが無い内容なのが面白い。

荒井田メルはどうなったのだろうか。

川の流れに引き込まれたのかそれとも。

特撮「綿いっぱいの愛を!」レビュー

特撮の6thアルバム「綿いっぱいの愛を!」(2005/06/29)のレビュー

 


1.地獄があふれて僕らが歩く☆☆☆

カッコイイし「吠えづら今にかくなよ」とかオーケンらしさのある曲だな〜と思うんだけど、オーケンと殺人鬼とかサイコパスに対する解釈があんまり合わないんだよな。

 


2.綿いっぱいの愛を!☆☆☆☆

純粋にいい曲だな、と思う。めちゃめちゃレアなエロい歌詞も良い。

この曲はとにかくピアノのメロディラインが好きだな。

 


3.僕らのロマン飛行☆☆☆★(3.5)

かなり珍しい気がする打ち込み感満載の曲。

ウインカーのどの曲よりドライブに向いてそう。ヤマもオチもないこういう低空飛行な曲は結構好きだなあと思いながら文字打ってたら終盤めっちゃ勢い増してきて笑う。どうすりゃいいんだ。(曲展開忘れてた)

 


4.ダンシングベイビーズ☆☆

音が薄い気がする。まあ意図してるだろうけど。ボースカ声は可愛いね。

踊ろうぜダンシンベイビーズ!の所は好き。

 


5.死人の海をただよう☆☆☆

割と好き。でも作詞があんま心に引っかからないのはこの時のオーケンの趣味とズレがあるんだろうな。間奏の後ろのギターが地味にUK感満載。

 


6.江ノ島オーケン物語☆☆☆

ナンパしておいて勉強しなよって説教するの、最低ジジイ過ぎて笑う。サビでX JAPAN郷ひろみのこと歌うの面白いな。という意外性もあり曲調もオーケンののほほん声に合ってて良い。

 


7.回転人生テクレ君☆☆

最初のボースカの「アレ!?」がピークな気がする。なんか曲展開とか「ちょっと待ってくれ」とかどっかで聞いたような感じ。なんかの歌謡曲か?めちゃめちゃ既視感

 


8.デス市長伝説(当選編!)☆☆☆

めちゃめちゃバカ曲。大麻好きなのかなオーケン……

 


9.さらばマトリョーシカ☆★(1.5)

イントロが良い。サビも嫌いじゃない。

これ誰の声だろう。

 


10.世界中のロックバンドが今夜も… ☆☆

「世界中で今日もまたバンドは歌う今夜はひとつと」って歌詞が良いなと思った。

ひとつがひとつじゃない。

 


11.オーケン刑事(bonus track)☆☆☆

昔の刑事コントみたいだな。でも音が絶妙に「それ感」あるのが良いな。みんな死んでいく時のセリフが何となく筋少の「221B戦記」を思い出す。最後の会話はかなり好きです。

 


総括☆☆★(2.5)

次の「パナギア〜」に繋がる予感も感じるアルバムだと思うけどやっぱりほかのアルバムに比べるとちょっと落ちるかなぁという気はする。個人的にはこんだけこのアルバムが評価低いの、やっぱオーケンオーケンをかなり自覚的にやっているところに対する違和感、拒否感みたいなものが大きい気がする。

オーケン、自分のパブリックイメージ的「オーケン」はかなり一般的なサイコ的な歌詞を書く人だと思っていないか?実際はもう少し複雑だろ、と思うんだよな……

特撮 レビュー(番外編) 「5年後の世界」

アルバム「5年後の世界」のうちから数曲レビュー。

 


1.5年後の世界☆☆☆

多分五年後は想像もしていなかった世界になってるんだろうな。メロディのない曲を、という方向で作られたらしく、確かにメロディがない。ので少し聴きにくい。歌詞は良い。

 


2.林檎もぎれビーム!☆☆☆☆

これをロックバンドのフロントマンが声優に歌わせるの、良いなあ。

Aメロでの閉塞感からサビでの解放が凄く好き。

 


3.人として軸がぶれている☆☆☆☆☆

5年後の世界で一番好き。

今の俺に1番近い気がする……と思わせる魔力を持っている曲。

「あの人は軸がぶれてない素敵!」

「ぶれまくって震えてるのを悟らせるな」ってのがオーケンイズムを感じて凄く好きだし、君を探しているのに「アタシ」が支えてくれるのには気づかないんだな。

 


4.空想ルンバ☆☆☆☆☆

ひとつの曲の中で"僕らの心には星や花があることを、獣が爪や牙を研いでいること" をどちらも書いた事に凄く意義があると思う。

オーケンは作品から自分の価値観に落とし込む(めちゃめちゃ悪い言い方をすると作品の要素を奪う)のが上手いなあと思う。個人的にはそれがズレてることも多いけど。

 


5.勝手に改造してもいいぜ☆☆☆☆☆

究極のラブソングだなあ。

めちゃめちゃに好き。かってに改蔵の主題歌?なのでそっから飛躍させたんだろうけど、その言葉をオーケン的究極の愛の言葉(受容)に捉えられるの本当に才能だなと思う。

 


メビウス荒野☆☆☆

個人的にあんまり「いろんな曲の要素をキメラ化しましたよ!」みたいなのが好きじゃないのと林檎もぎれビームが無理矢理だな、って感じがちょっとだけ苦手。でも女の子達が次々と消えていって「後は自分で」と突き放される感じはめちゃめちゃぞくぞくして好き。

サビも良いし曲調も好き。

 


総括☆☆☆☆☆

セルフカバーアルバムになるんだろうけど、お金の都合で上記の5曲しか買っていない。

で、その5曲のみでの評価だけど凄いアルバムだな、と思う。オーケンタイアップ、まあわりと平凡なものが多いイメージだけど絶望先生コラボは全部(かくれんぼか鬼ごっこよも含め)傑作なので世界観が合ったんだろうなぁと嬉しい。「人として軸がぶれている」は個人的にかなり自分の人間観に影響している。

ヒップホップでいう「パンチライン」が全ての曲にあって凄い。

特撮 「パナギアの恩恵」レビュー

特撮の7thアルバム「パナギアの恩恵」(2012/12/12)のレビュー

 


1.薔薇園オブザデッド☆☆☆☆☆

めちゃめちゃカッコイイ。近年の特撮の中でもキレッキレの楽曲だなと思う。

特撮、リアル試行な曲よりこのくらいメルヘン(?)な世界観の方が割と相性良いなと思う。「何人殺せど植物さ」「何人愛せど人じゃない」って歌詞はこのアルバムでのオーケンのベストだと思う。

 


2.くちびるはUFO ☆☆☆☆

タイトルからも歌詞からも筋少の「UFOと恋人」の頃の世界観を思い出す。

バイの女が主人公の歌だけど、最後のプレイの部分をメロディの良さでそのヤバさが気にならない曲にしてるの凄いな。オーケンの作詞とNARASAKIの作曲の組み合わせの妙ですね。ワンワン。

 


3.タイムトランスポーター2「最終回ジャンヌダルク護送司令・・・放棄」☆☆☆☆☆

主人公の「僕」が若いオーケンで全部再生されるの、オーケンのキャラ作りのうまさだなぁと思う。海で水着姿ではしゃぐジャンヌダルクと消えていく世界、完全にFGOで笑うが2012年にこれ書いてるので凄いな。そういうの関係なくすごく好きな曲です。

個人的TOP5に入る。

 


4.GO GO! マリア☆☆☆

曲調は全く違うけどなぜか爆弾ピエロ的盛り上げ方を感じる。サビが凄く好き。

 


5.桜の雨☆☆☆☆

アルバム全体通してエディのピアノが本当に世界観の構築を凄く強くしてる。

凄く好きな曲だけどあまり語る言葉を持っていない。

 


6.Arion 〜Hommage a Claude Debussy〜☆☆☆☆

エディのインストは良いね。

 


7.鬼墓村の手毬歌(short edit ver.)☆☆☆☆

金田一の世界観なんだろうな。金田一全然詳しくないけど分かる。full ver.を聴かせてくれ!!!!!!(無い)(と思いきや8分のver.が限定であるらしい、羨ましい。)

田舎の田んぼのふちで金田一のコスプレしたオーケンが歌うMVが脳裏に。

 


8.13歳の刺客☆☆☆

オーケンこのアルバム何故かストーリー仕立てのものが多い。主人公がオーケンと被らない珍しい曲。最近のオーケンらしさ全開の曲だけど、やっぱオーケン像と乖離しすぎるとちょっとだけしらけるような感覚も覚えてしまうな、と。

 


9.じゃあな☆☆☆☆☆

2012年のオーケンが書いた「サンフランシスコ」なんだな。本人も意識してるし。

中也の詩集をあげようとポケットに突っ込んで、中也の詩から引用する男、最高に不器用だな、と思うけれど最後に「じゃあな」と言えるのが素敵だな。

 


10.ミルクと毛布☆☆☆☆☆

調べ直したら、オーケンが弾き語りで作った初めての曲らしい、すごいなぁ。

だからそれまでの口でメロディを刻んでいた曲より圧倒的にシンプルなんですが、だからこそ良いなぁと思う。「人肌でいて」って毛布やミルクに言っているのかもしれないけど、愛する人に「人肌でいてね」というメッセージだとしたらなんだか素敵だな。サイコ的捉え方もできるけど俺は優しい言葉として捉えたいな、と思った。

 


総括☆☆☆☆☆

筋少再結成後(2007〜)のオーケンのベストだと思う。

オーケン筋少の再結成後はちょっと「オーケンを演じている」感じがして、それ故のセルフイメージのオーケンとパブリックイメージのオーケンの齟齬を感じて乗り切れない感じがあるんだけどパナギア(特撮)に関しては本人にそういった姿勢をあまり感じず、凄く新しさと「らしさ」の塩梅が良いなと思う。

曲としては普通に好きだけど13歳の刺客は別にアルバムには要らんな、という感じがある。9曲にギュッと絞っても良かったのではないか。でもまあ好きです。良いアルバム。

「和歌山県立近代美術館」 黒川紀章

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黒川紀章設計の和歌山県立近代美術館(1994竣工)についての備忘録。

 

竣工時にはバブルは終わっているが所謂「バブル建築」と言われるもので、黒川紀章ポストモダニズム的意匠が非常に印象的な建築物。

和歌山の建築物で唯一「公共建築百選」に選ばれている建築物でもある。

 

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和歌山城天守閣と道を挟んで向かい合う形で建てられており、和歌山城側に突き出したキャンチレバーの屋根が非常に特徴的。

このメインのキャンチレバー以外にも屋根は幾つも、2層に重なりあって突き出しており非常に印象的。

正面から見ると右手が階段になっており、左手は坂になっているのだかこの坂は数年前までは水が流れていたらしく、水道代の節約等で止められているらしい。僕は個人的な感覚として「こういったものこそケチるべきではない」と考えているので非常に残念。これだけ幅のある坂に水が流れているだけでそこに豊かな市民の場が生まれるだろうに。

しかし、水が流れていないながらも展覧会などを見に来た訳では無い地元の住民(老人や子供)がキャンチ屋根の下で涼んだり会話をしていたので、公共建築としてのこの場所の価値が保たれていることに感動した。

 

1階ホール

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一階ホール窓下部。内側にもキャンチ。
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ソファスペースからトイレに行く間の吹き抜け。入ってくる薄ぼんやりとした光が心地よい
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入口からそのまま階段などを経由せずに展覧会に入っていける
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展覧会入口側からホールを見る。

 

ここが一番素晴らしかった。要素としてはなんてことはない「ホール部分が広く非常にゆったりとくつろげるようになっている」というだけなのだがこれが非常に強烈な体験で、個人的な話だが大学の次の課題が美術館なので「公共建築としての美術館としての価値」をずっと考えていたのだけど、ホールを広く取りそこにアーティストのオブジェや名作椅子や過去の展覧会の図録などを置くことで無料で市民が手軽に(クーラーの効いた心地よい空間で)ゆったりと芸術に触れることができる。という事の重要性を強く感じた。

メインの企画展も1階のホールから受付の横を通りスっと展示室に入れるようになっており、企画展が1階ホールなのはわりと珍しいような気がした。

 

2階ホール

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受付の向かいに2階に上がる階段がある。
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キャンチのあの屋根の根元。
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左手の本棚はカフェのインテリア。
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階段踊り場から天井のキャンチ根元部を見る。

 

2階にはカフェがある以外はそこまで特徴的な部分はないが、この美術館の最大の特徴であろう長いキャンチの根元部が2階ホールの天井部にある。隠さずにこれを大胆に外から内側にまで展開させているのは(勿論構造的理由も大きいだろうが)面白い。これがどこまで続いているのかは分からないが、吊ってもたせているのかキャンチを反対側にもこのまま長く取ってもたせているのか予想がつかない。

他に言うとすれば、階段の幅の広さはこの美術館という空間をすごく豊かに見せると思う。この階段を歩いているとまるで自身が貴族になったかのような穏やかで満たされた気持ちになる。手摺の緩やかに半月型の曲線を描くデザインも石材の冷たい質感も素晴らしい。

これは外部空間もだが、近代美術館の手摺が全てぐねぐねになっているのはデザイン的には良いが実際使うとすごく不便だと思うので公共建築にしてはわりとリスキーなことをするなと感心する。

 

展示空間

展示空間に関しては特に特筆すべき様な点は無いが、所謂廊下的な展示空間ではなくホール的空間なので後でそこをパーテーション等で自由に区切りやすく展示の自由度は高いと感じた。

しかし実際に構造に根ざした壁に絵画などを置くことの意味性も少しはあると思うので、やはり汎用性を高くするか強度の強い空間に固定するかは選択だなと思う。

やはり基本的には常設展は強度を強くして企画展は振れ幅を広く設定できるようにするのが定石か。

 

地下・駐車場・トイレ

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奥がトイレとなっている。ここを右に進むと地下駐車場。
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地下の下窓から見える椅子かソファー?のオブジェ

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吹き抜けになっており1階部の庭から見ることが出来る。先に見ていた不思議な空間が後に空間的に繋がりが分かると、物語の伏線が回収されたような気になって心地よい。
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キャンチの下には階段が着いており、ここから美術館を介さずに直接カフェに行くことが出来る。が、ほとんど使う人はいない。この階段が外部からは見えにくくなっているのもデザインの妙だなと感じる。
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地下駐車場。近代美術館に限らず、駐車場の柱の並びなどを美しく感じることがわりと多く、真剣に駐車場について考える機会を設けたいなと最近考えている。
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トイレの洗面台がシンプルながらかなりカッコ良い。すりガラスにはめ込んでいる形初めて見た気がする。

 

近代博物館

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近代美術館の入口前広場
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近代美術館入口から博物館方向を見る。
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近代美術館に併設されている近代博物館。実際は地下と屋根で繋がっており博物館と美術館でひとつの建物、ということになっているらしい。しかし外観を見た感じだと完全に別の建物だと思う。黒川紀章も絶対別って考えてるでしょ。

近代美術館の入口前の屋根部からそのまま屋根の下を移動して博物館に入ることが出来、雨の日などもこのふたつの建物間の移動は非常に楽。

外観は近代美術館に較べて非常に大人しく見えるが、それは敷地に対して内側のみで外側を見ると

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このように小さなキャンチが幾つも突き出しており、敷地の外から見た時に博物館と美術館に非常に強い連続性を持たせようとしている事が分かる。
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手前の青が近代美術館、奥の白が近代博物館。

これは美術館の裏側(搬入・駐車場入口側)なので所謂「顔」の部分ではないが非常に見られることを意識してキャンチによって纏まりを持たせている。
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裏側下から近代美術館・博物館を見る

 

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近代美術館から繋がっている上空の橋が建物内部にまで展開している。
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内観。博物館は近代美術館に対して面積がかなり小さく、ホールも最大限に広くとっているがどうしてもミュージアムショップなども含めて空間が狭く感じる。見た時にちょうど親子で家族が来ておりホールで涼んでいた。美術館に比べ博物館の方が静寂を求められる感覚が低いからかもしれない。

 

その他

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近代美術館の簡易図面。敷地外部に対してギリギリまで面を取って美術館と博物館を揃えて見せていることが図面からも伺える。
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和歌山城と近代美術館の間の道路に並ぶ街灯。

この街灯がズラっとこの道には並んでいるが、これは黒川紀章が美術館の設計時に同時に設計したもの。

公共建築を県の重要な意味を持つ場所に設計しよう、という時にこういった周りの環境に対する黒川紀章の姿勢は非常に尊敬する。

デザインも近代美術館に連なる大小のキャンチを想起させつつ城と喧嘩をしない均整のとれたデザインで非常に好ましい。デザインはそのままにこれは2代目で、初代の黒川紀章デザインの街灯は老朽化によってすげ替えられている。そのうちの一つは近代美術館の職員の要請によって美術館内に保管されているらしい。グッド。

地元の建築をこうして建築科に入ってから改めてきちんと見ると感動する点が多く非常に面白かった。文中では飛び出した屋根のことを全て「キャンチ」と表現しているが、キャンチというよりも特殊な「庇(ひさし)」の方が適切かもしれないです。

「大阪芸術大学 アートサイエンス学科棟」 妹島和世建築設計事務所

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妹島和世建築設計事務所設計の大阪芸術大学アートサイエンス学科棟(2018年竣工)の備忘録、感想等。

 

大阪芸術大学は大阪のド田舎にあり、入口もわりと急な坂をぐるっとまわりながら上がる。

大阪芸大内の建物は殆ど高橋靗一の設計であり、後期コルビュジエ的なコンクリートのものが多い。坂を上がりきった所には高橋靗一設計の「芸術情報センター」と「11号館」が迎えてくれる。

 

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新学科棟から11号館(左)と芸術情報センター(右)を望む

 

高橋さん設計の建物が(一部手直しされているとはいえ)殆どの空間を構成している中で新しい校舎を設計するというのはかなり難しいだろうと思っていたし、新建築内での写真を見た段階では「格好良いが単なる客寄せパンダ的な扱いに収まってしまうのではないか」と考えていたのだが実際に訪れるとそのようなことは無く非常に感動した。

 

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新学科棟は大阪芸大の坂からそのまま繋がったような丘の起伏を模したスラブで構成されており、これが誌面で見るよりも圧倒的に「その地の流れ」を読み、建築内に含んでいる。

 

坂から流れるように歩くとそのまま2階に繋がる屋根スラブに乗るようになっているのだが、分厚い屋根スラブに乗るという体験は非常に力強く、建築(それもRC特有の)パワーがあるなと感動した。

見た目の奇抜さだが、勿論高橋さん設計の校舎と明確に違いはあるが特別悪目立ちしている感じはなく今後長く使われていく中で色も黒ずんで少しずつ大学に馴染み落ち着いていくのではないかと思う。

 

内観は外から見たまんま、というか外から見る以上に開放的で本当にスラブが宙に浮いているような感覚すら覚えた。

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非常に細い柱とブレースのみで構造を担っておりどうやって保っているんだろうとしばらく考えてしまった。強化ガラスも構造を担っているのか?と考察したりもしたが後で新建築を読み返した所どうやらそうではないらしいのでやはり柱とブレースのみで支えているのか。

ここら辺の話は構造がサッパリなのでぼんやり考えるだけで終わってしまうので知識がないことは我ながら罪だなと思う。

 

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ホールには妹島和世デザインのスツールが置かれている

 

銀の壁は全て個室に繋がる扉になっており、壁を展開させるとそれぞれの個室に行ける。f:id:TEA_mu:20190712035537j:image
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フィルムカメラ風のやつで撮影したので変な光が入っている

 

壁面の外側に並ぶ個室と地下に複数部屋があり、

パブリックな空間(中央吹き抜けスペース)とある程度プライベートな空間が使い分け出来るようになっている。

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地下階段から地上階を見る
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地下の廊下。両脇にいくつか大小様々な部屋がある

 

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地上階の入口から向かって左が個室、向かって右は写真のようにガラスで廊下を隔たっており、こちら側には機械室等がある模様

 

全体的に素晴らしい点が多く非常に強く刺激を受けたが、地上階のパブリックスペースは反響音が凄まじく、スツールなどを引いて座ろうとするや耳をつんざくような音がするし、会話をしてもトンネルの中にいるかのような状況で、長時間ここでミーティングをしたり、リラックスをする、というような場所としてはとてもじゃないが使えないと思う。

自分の大学(大阪芸大では無い)の教授に質問したところ、やはり通常の使い方はほぼ出来ず、人が沢山入るとそれぞれが吸音材の役割を果たしてかなりマシになるらしい。

人が吸音材にならないとダメな空間ってなんだ。

思うに、「ガラスで周囲を囲っていること」と

「コンクリートの仕上げがツルツルなこと」が要因として大きいのだろう。

大学の施設としては致命的だと思うが、このコンクリート仕上げは非常に重要な要素のひとつだとは思うので公共施設や大学施設の設計は難しいんだろうと思わさせられた。

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新学科棟の入口付近。

 

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最後に高橋靗一設計の校舎達。

ポップでしか表せない愛と哀のカタチ。 Base Ball Bear 「(WHAT IS THE)LOVE&POP?」レビュー

Base Ball Bearレビュー③「(WHAT IS THE)LOVE&POP?」

 

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3rdアルバム「(WHAT IS THE)LOVE&POP?」(2009/09/02)のレビュー。

 

前作「十七歳」のポップ路線を強化しつつ所謂ギターロック的でハードな音楽性に寄ったアルバム。と言っても「C」からずっとギターロックという面は大きいので、やはりポップ性の拡張が特色と言える。

タイトルは言わずもがな、小出が影響を公言しているイギリスのバンドoasisの2nd「(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY?」のオマージュで、このアルバムの特徴を挙げるなら「小出のソングライティングの圧倒的な暗さと、そこにどうしても同居するポップさ」であり、

自分にとっての初めてのBase Ball Bearのアルバムなので個人的にも思い入れが強い。

個人的な括りとして「思春期引き摺り三部作」の3作目。

 

1.stairway generation ☆☆☆☆

銀魂のアニメ主題歌。

タイアップなのに歌詞がめちゃめちゃ重いのだけど、普通に聴いてるだけだとそのメロディの強さ(ポップさとも言う)に引っ張られてめちゃめちゃ希望の歌に聞こえる。

孤独のいう名の風邪 19で終わりじゃないのかい?

という歌詞が、青春と距離が離れていきながらもずっと引きずっている暗さを凄く端的に表している。

1番のAメロが""で歌詞を括ることによって「小出への(あるいは自分からの)質問、助言」のようになっていて、2番のAメロでそれに対するアンサーとは言えない心の違和感の吐露を書いている。

「主張の強さ」というハードさを、それ以上に強いメロディ(ポップさ)でかき消しながらも歌詞にきちんと向き合った時にきちんと届くように曲を作っているな、と感じる。

タイトルから、何となくインディーズ時代の楽曲「夕方ジェネレーション」を連想させる。夕方〜でも言えることだけど、この時の「ジェネレーション」という言葉、同世代とかという意味より「今の時代を生きる僕ら」位の広さを感じる。

Base Ball Bear - Stairway Generation - YouTube

 

2.sosos ☆☆☆

めちゃめちゃリライト。

びっくりするくらいリライトなんだけど、(リライト故に)カッコイイ曲。

メロディ以外のところで言うと、歌詞の情景が凄く映画的で面白い。stairway~もそうだけど、歌詞を括弧で括る表現があって、それがこのアルバムの特徴かもしれない。それは不特定多数の他人の声でもあるだろうし、自分の内側からの声でもあるだろうけど。

歌詞見るに自殺の曲なんだけど、どうやら主人公は飛び降りる女の子ではなく「僕」。

女の子が死んでも希望を捨てる事が出来ない僕のSOSの歌。

 

3.changes(Album ver.) ☆☆★

図書館戦争のアニメ主題歌。

当時は小出は「こんな無責任な希望歌えねえ」とあまり好きではなかったらしいけど、スゲーいい歌詞だなと思う箇所が多い。

何かが変わる気がした

何も変わらぬ朝に

いつもより少し良い目覚めだった

って歌い出しが特に好きで、そういう日ってごくたまにあるし、失望でもあるけど間違いなく希望でもある感じが凄く上手いな、というか共感してしまう歌詞。

曲が終わったあとにアルバム版にだけ

夕方世代を 行き過ぎる頃

ようやく胸をなで下ろしました

暗黒時代に 背を翻し

僕は助かった つもりでした

という歌が入っており、これは次の曲のAメロをなぞって路上での弾き語りの形で収録されている。

意味としては「孤独という名の風邪19で終わりじゃないのかい?」と繋がっているし、「変わった」と希望を歌うchangesの最後にこれを差し込むの、本当にこの曲が許せなかったんだな、という気持ちが強い。

Base Ball Bear - changes - YouTube

 

4.神々LOOKS YOU ☆☆☆☆

鴨川ホルモー主題歌。タイアップ多いな。

この曲も明るいので小出は当時はあまり好きではなかったらしい。でも本当に良い曲。この曲に救われた人は(小出の本意の歌詞ではないとしても)いっぱいいると思うし、自分にとっての「曲で心を奮い立たせる」経験の初めての曲な気がする。

歌詞も勿論だけどとにかくメロディ、声、全てが100点。MVも100点。

Base Ball Bear - 神々LOOKS YOU - YouTube

 

5.Love letter From Heart Beat ☆☆☆★

紙飛行機 B5 折りなして 

という歌詞が好き。B5って紙のサイズ歌詞に使うの、凄くツボでこういうちょっと捻ったテクニカルな歌詞に弱い。ラブソングなんだけど

カナダより 彼方より あなたへ届けたい

紙飛行機 成田より あなたへ飛ばしたい

という歌詞から女の子がカナダに行ってしまったけど手紙を書いて紙飛行機にして飛ばす(届かない)男の子の歌なんだろう。

 

6.ホワイトワイライト ☆☆☆☆

マチュア時代に制作された楽曲。

「わざわざこのアルバムにめちゃめちゃ前の楽曲を収録した」意味について考えてしまう。

レビュー執筆の少し前に発売されたサカナクションの最新アルバム「834.194」では、アルバムの最後に2パターンの「セプテンバー」という札幌時代の楽曲を収録することによって、東京と札幌の両方の自分を対象化しながら描いている。

そこから考えてもやはり、わざわざこの「最も暗いアルバム」にホワイトワイライトを入れた事が無意味には思えない。

個人的な考えでは、ホワイトワイライトが淡い希望を歌う内容であることも踏まえて「過去の自分(孤独という名の風邪を患っている)から今の自分へのエール」としての役割を担っているんじゃないかと思う。

「changes」や「神々LOOKS YOU」を今アルバムに入れることはある意味で嘘をつくことになるけど、本当に未来へ希望を歌っていた昔の自分の歌なら。という。

ホワイトワイライト 

淡く暗くない

未来遠くはない

YouTubeには公式のMV無いんだけどめちゃめちゃ良いです。凄く良いMV。

 

7.BREEEEZE GIRL ☆☆☆

青春!夏!イェー!みたいな。

今 涼風ガール 夏いね

って歌詞が全てだと思うんだけど、「夏いね」ってワード、すげえパワーワードというかパンチラインというか。多分元ネタとしては「暑は夏いね」って定番のダジャレだと思うんだけどそれを完全に「この夏しかないワード」に昇華させてる感じ、流石だなあと思う。

Base Ball Bear - BREEEEZE GIRL - YouTube

 

8.LOVE MATHEMATICS ☆☆☆☆★

キラーチューン。ほぼ毎回確実にライブでやる。

キラーチューンなので当然曲がめちゃめちゃカッコイイ。

歌詞は、比喩表現をめちゃめちゃ重ねるタイプの曲で、アップテンポなリズムに合わせて何度となく「君」を様々な言葉に喩えながら最後に

この例えどうだ

と聞いてしまう感じ、「僕」のめちゃめちゃな自意識の強さを感じる。

Base Ball Bear - LOVE MATHEMATICS - YouTube

 

9.SIMAITAI ☆☆☆

君と〇〇してしまいたいよ!どこに行っても何をしても君とじゃないと……っていう直球成人ラブソング。エロい意味も多分含むのだろうけど歌詞内では特にその表現は無い。

「幸せな 結末がいいの」

その件は望むところだが

って歌詞が凄く好き。(「」内は関根が歌っており女性側の心情となる) 2番では

「林檎なら 一口ずつ」

その線で ストーリーライトしていきたい

になり、なんとなく「僕」は映画の中の登場人物か、逆に映画監督のような気持ちでこの恋愛をしているのではないか?という印象を受ける。

 

10.海になりたいpart.2 ☆☆☆☆

めちゃめちゃ人気曲。part.1はインディーズ時代の楽曲。ベボベはわりとこのpart1.2をすることが多いけど繋がってるものの方が少ない。

超アップテンポ。ライブだと盛り上がるしかねえ!って感じのよくできた曲だと思う。それでいて歌詞はめちゃめちゃ優しいというか、悲しさの中でどうにかあなたを包んであげたいよ、っていうすごく穏やかなテーマ。

T・H・E to the E・N・D 意識したあなたは

(泣かないで) 幸せな歌、唄えない

ならば 僕が 唄ってあげる

って歌詞がすごく好き。ありふれた哀しみや絶望、願いに対するアンサーががむしゃらなんだけど芯を捉えている感覚を覚える。

 

11.レモンスカッシュ感覚 ☆☆☆☆

「ホワイトワイライト」と対になる曲。

個人的な感覚では、「C」の頃に詩世界が近い感じがするというか、ぶつ切りの映像がいくつも繋がっていくような感覚になる曲。

でも写っている映像は海の見える都市では無い「今」だ。情景は映画的で、だからこそそれは願望であり真ではないのだろうと分かる。

アルバムのテーマである「ラブ&ポップ」を歌っており、このテーマはこのまま次の曲に引き継がれる。

レモンスカッシュ感覚(≒ラブ&ポップ)とキスやセックスを分けてしまっている感じが、結構この時期拗らせてる感じがするなー、と思う。

 

12.ラブ&ポップ ☆☆☆☆★

アルバムの主題を歌っている。Bメロからサビの流れがめちゃくちゃ良い。

永遠に続く感覚(レモンスカッシュ感覚)が続いて満ち足りたようでありながらも何故か助けを求めている自分、という曲。暗い。

一人だけの僕が 一人だけの僕のこと

見つめている 見つめあっている

一人だけなんだ ああ、わかっている

って歌詞めちゃめちゃかなしいな。1人だけの僕が、自分と見つめ合える筈が本当はなくて

それに自分も気づいている(けど自分としか見つめあえない)という。

そこから

一人だけの僕は 一人だけの僕のこと

見つめている 許しあっている

ひとつだけなんだ そう ひとつだけ

と慰めは終わらずに最後の最後に

素晴らしい日々 僕は僕と過ごしていく

そしていつか

曝してみたい 自分自身

でこの曲、このアルバムは一旦の終わりを迎える。

ハッピーエンドもバットエンドもなく、その中間の普通の虚無、普通の哀しさに対して「いつか曝してみたいなあ」というつぶやきでこのアルバムは内向きなまま終わってしまうが……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

13.明日は明日の雨が降る (secret track) ☆☆☆

3分の沈黙の後で雨の音と共に始まるシークレットトラック。

余談だけど、この雨音はoasisの(WHAT'S THE STORY)MORNING GLORY?の最後の曲であるchampagne supernovaのイントロの波の音のオマージュだと思っている。っていうかほぼ確実にそう。

Oasis - Champagne Supernova - YouTube

歌詞はめちゃめちゃ暗いしこんなに直球なことあるかってくらいに直球。

ラブ&ポップの最後に「そしていつか 曝してみたい自分自身」と歌ったのはこれの前フリであることが分かる。けれど

明日になれば泣けるのかな
あの壁の向こうで笑う

自分を思ってみる だけど

曝した所で泣ける訳でも笑えるわけでもない、真顔で黙々と生きていくだけ。

心の雨は涙ではないし太陽も笑顔ではない。

結局3分待っても雨が降るだけでハッピーエンドもバットエンドも来ず生活は続く。

この曲を聴くかどうかでアルバムの印象は大きく変わる。

 

総括 アルバム ☆☆☆

暗い。暗い中でもがきながらラブ&ポップを探す、かなり重いアルバムなんだけど、その表現手法としてのポップさ故に一見するとすごく明るいアルバムにも聴こえる。ボーナストラックを聴くかどうかによってもかなり変わるのでこのアルバムは特にiTunes等の配信での購入はオススメできない。

音楽性や歌詞は大好きだしアルバム通しての聴き心地も本当に考えられた作品だなとは思うけど、やっぱり答えがない暗さからアルバム1枚通して(もっと言うとバンドを始めた頃からずっと)抜け出せていないことをここまで歌ってしまうことにかなしさも覚えるし、それを純粋に良い、という評価も自分にはやっぱり出来ないなぁと思って☆3にしました。自分がつけた星の数以上にすごく良いアルバムだと思う。でも3。

でもここがあるからこそ「新呼吸」に繋がるのだ、と思うとすごく大きな助走のひとつなのだと感じる。