彼女と海と都市。と俺。 Base Ball Bear 「C」 レビュー
Base Ball Bear レビュー① 「C」
メジャー1st アルバム「C」(2006/11/29)のレビュー。
(☆の数で評価してますが、一番好きなバンド故にかなり厳しめで付けているので☆3でも大好きな曲です。)
一番最初に買ったアルバムが「(WHAT IS THE)LOVE&POP?」で、そこからしばらくして買ったアルバムなので自分にとっての1番最初ではないけど人生で一番好きなバンドの1stという意味ですごく特別なアルバム。Number GirlやSUPERCARからの影響がまだ強いと言われていた時期のものだが、実際に聴くと勿論エッセンスとしてはそれらを感じるもののあくまで「Base Ball Bearの音」がちゃんと鳴っているな、と思う。初期衝動と音楽性の高さが両立した非常に完成度の高い良いアルバム。
1.CRAZY FOR YOU の季節(Album version) ☆☆☆
「青春バンド」Base Ball Bearとしてのメジャーでのアルバム1曲目を飾る記念すべき曲。
四つ打ちのアップテンポな曲で歌詞は既に小出の詩的センスが垣間見える、初期ベボベの要素を詰め込みまくった名刺替わりになるような曲で、疾走感が気持ち良い。
武道館ではラストにこの曲を演奏した。
Base Ball Bear - CRAZY FOR YOUの季節 - YouTube
2.GIRL FRIEND ☆☆☆
「C」を構成する曲の中でもかなり重要なポジションを占める曲のひとつな気がする。
抱きしめた最悪の結末が透明の笑顔のせいで綺麗だ
というフレーズがすごく好き。君の笑顔で地獄も全て綺麗に見えてしまう(でも何ら解決はしない)のが小出の青春観なんだろうな。
3.祭りのあと ☆☆☆☆
初期ベボベの代表曲のひとつでこのアルバムのリードトラック。
所謂「四つ打ちダンスロック」的な楽曲なんだけど今聴くとわりとゆっくりに感じる。フェスとかライブだともっと早いので、四つ打ちというジャンルのインフレを少し感じたりする。
今のベボベが歌うと大人の曲に聴こえるんだけど、改めて聴くとすごく学生の情景が浮かぶ。
素敵な絆は 涙になる 初めて傷付くなら君がいい、空気……気持ち悪い
という歌詞に小出の青春に対する劣等感、嫌悪感みたいなものを感じる。夏の終わり頃の涼しい風は気持ち良いけどオレ達のこの空気は気持ち悪い。
Base Ball Bear - 祭りのあと - YouTube
4.ELECTRIC SUMMER ☆☆☆
メジャー1stシングル。日本のロックシーンにおいて四つ打ちダンスロック(早めBPM)を初めてやった曲らしい。
これまでの4曲全部そうなんだけど、Cのベボベの曲は群像劇的というか、海のある都市(まち)の色んな風景が目まぐるしくアルバムをめくるように変わっていくような歌詞の書き方だな、と感じる。放課後のあいつ、屋上にいるあの子、都市にふく風、あの子を見る俺。海。
Base Ball Bear - ELECTRIC SUMMER - YouTube
5.スイミングガール ☆☆
インディーズ粗削りベボベ感。爽やかな風が通るような曲調だけど歌詞をよく見ると所々に影を落としている。
アルバムの中だとかなり単調だけど勢いで1曲押し切ってる感じは好きです。
6.YOU'RE MY SUNSHINEのすべて ☆☆☆
YESとNOを忘れたら何か素晴らしいもの手に入れられそうさ、という根拠の無いことを歌うけど、でも確かに手に入れられそうな気がしてくる。
1番は「何か素晴らしいもの取り戻せそうさ」なんですよね。学校のテストでは〇か✕か決められて、俺含めてみんなも何となくyesかnoの2種類しかないと思っているけど、それ以外の選択肢を見つけた時に、俺が失った「何か」が戻ってくるんじゃないか、という歌詞だと思っている。
7.GIRL OF ARMS ☆☆☆★(3.5)
街と海と俺の三角関係
ってフレーズ、小出は天才じゃなかろうか。
思春期の「俺」と狭いこの街との距離感を考えてしまう。そこにどこまでも続く海。これはseeとsheのダブルミーニングなんじゃないか、とも思う。そもそもアルバムタイトルの「C」が都市のCity、彼女のShe(シー)、海のSee(シー)、死、などのイメージが元になってるらしいのであながちこの予想は外れてもいないんじゃないか。
8.DEATHとLOVE ☆☆☆☆
暗いテーマのはずなんだけど、そこに影がない。でもタイトル通りDEATH(死)を扱っているので普通に考えると「君」はもういないんですよね。でもそんなテーマを扱っているけど笑って送り出せる、これだけ晴れやかな曲調であるということが救いになってる感じがします。
9.STAND BY ME ☆☆☆★
曖昧になるそれでいいとは思えやしない!
と言い切る真っ直ぐさとか、すごく青春の眩しさを感じる歌詞。
このアルバムの中でリズム、メロディー共に一番好きな曲かも知れない。すごく完成度が高い。
Base Ball Bear - STAND BY ME - YouTube
10.ラストダンス ☆☆
Cというアルバム全体で死を扱うからこそ「俺は今、生きている」という感覚がすごく強く強調されている。
永遠のしばしの別れ、単純に捉えると「死」なんだけど、なんかもっとスケールが小さいような気がするというか、転校してしまう、とかでも学生の小さな社会の中だと最早永遠に会えない死別そのものなのではないか。
11.SHE IS BACK ☆☆☆
君はサマーガールだけど、このアルバムが出たのは11/29でもう冬だね。というのがすごくBase Ball Bearにとって重要なんじゃないかと思う。青春から遠い位置にいながらにして青春を歌うBase Ball Bearを考えた時、夏との距離感で言うと11/29って本当に良いタイミングで。
この曲は、そういう「青春との距離感」みたいなBase Ball Bearのバンドとしての立ち位置を感じさせる。
総括 アルバム全体 ☆☆☆
「C」は未だに一番好きと挙げる人も多い不屈の傑作なんだけど、個人的にはわりと最近まであまり聴き込めていなくて、改めて聴き返すとそれまで思っていた以上にBase Ball Bearの青春性みたいなものが強くて驚いた。
高2の時にハマった癖にぶっちゃけBase Ball Bearが「青春バンド」として扱われることにすごく拒否感があるというか、青春と距離を取りながら青春に限りなく肉薄したソングライティングとか、青春以外の苦さ、音楽性みたいなのにハマったタイプなのでずっと青春バンドBase Ball Bearとしての扱いに違和感があったんだけど、「そりゃ青春バンドって言われるよね」みたいなアルバムでした。それでいて青春の勢いだけではない確実なスキルも備えていてヘビーなアルバムでもあるからすごいと思う。